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Neco の 陽なたぼっこ

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2007年 07月 26日

フランス・オーヴェルニュへの旅 (新しい出発)  その1

こんなにユーロが高くっちゃ、何処へも行けやしないわ。
1ユーロ160円よ〜! ランチを2000円以上も出さなきゃいけないなんて〜!と…。
声高に、しっかり遠くなってしまったヨーロッパを懐かしむ訳ではないけど、..。
やっと書けるようになった気がする。やっと今..。

この所、めっきり出られなくなってしまったが、以前は随分お金もないのに旅行した
もんだと感心する。

仕事がなかった時、落ち込んで行き詰まった時、建築の勉強に..と大義名分を掲げ
て、子供達を義父母に預けて、たまには、家族でと…様々な国に旅行した。
大義名分の性か、ただ単に我々の肌に合っていた性かは定かではないが、イタリア
とフランスには随分足を運んだ気がする。

「若い内に旅行せずして、年を取って何を語ろうか..。」という言葉があったが、
すでにその「語る」という領域に入ったという事なのであろうか?

今まで、私は、旅行をしたら、1週間以内にその旅の旅行記を書いてきた。
何故1週間以内かというと、..その期間内であったら、辛うじて覚えているからだ。
書いた後は、それはそれは見事な位消えてしまう。それは見事なもんである。
ところが、これから書こうとする旅行記はすぐその後書けなかった。
どうしても書けないのである。
今でもあんなに鮮明に覚えているというのに…。
私の価値観と生き方を180度変えてしまう程、強烈な旅だったからかもしれない。

2000年秋、一枚の写真を見た。広大な草原に大きな石がポツン、ポツンと点在する。
その石には苔がつき、その苔から儚げな草花が力強く咲いている。
ふと、大好きな宮崎駿の天空のラピュタの最後のシーンと重なった。
その写真の場所は、フランスの東にアルプス、西にピレネー山を望むオーヴェルニュ
地方のものだった。

無償に、ここのこの場所に身を置きたくなった。いわゆる大義名分とやらを一所懸命
考え、その場所の近くにあるという世界でも有名な3つ星レストランに行こうという事
で、相棒の了解を取った。

いつもの様に仲間に声をかけ、当初は友人夫婦と私達4名での旅行という流れ
だったのだが、友人夫婦が駄目になり、代わりにその当時のスタッフが参加すると
いう事になった。
が、しかしそのスタッフも我々の緻密な旅行スケジュールを見た途端、出発直前に
なってキャンセルしてしまい、結局私達夫婦だけの旅行となったのである。

さてさてどんな旅だったのだろう。

『2000年10月5日』
朝早く、広島から関西空港に出掛け、KLMでアムステルダムのトランジットを取り、
パリに夜遅く着いた。
フランスの田舎を訪れる前にせっかくのパリ、今まで行けなかったコルビュジェの
建築を見ておこうという事で、朝一番にST、LAZARE 駅からPOISSY駅まで行った。
サボワ邸までバスに乗った。
運転手にちゃんとサボワ邸を教えてね。と念を押したが、やはり心配で運転手の横
に立った。

目で合図した「まだ?」「ここ?」..。    
 「いやいやまだだよ。ちゃんと教えてあげるから..」
手に持った三脚が立っているお客さんの邪魔になっている。

「パードン、パードン」と謝りながら、バスを降り、丘の上にあるサボワ邸に到着した。

空は真っ青に澄み渡り、芝生と真っ青な空、そして真っ白の直線の建物のコントラス
トが美しい。
まだ朝早かったせいか、殆ど観光客はいないようである。
このサボワ邸はつい最近リニュアルしたばかりのようで、私の知っていた建築写真の
中にあるものより数段きれいに見える。

真っ白の壁、円柱のピロッティーと直線。 
余分な線が一本もないようなデザインである。
カーンカーンと足音だけが建物の中に響き渡る。広いリビングにはコルビジェの代表
作である椅子達がいかにもこの空間の主であるかのごとくに配置されている。

静寂な空間を楽しんだ。    ひとり建物から庭に出た。
まだ、太陽が低いせいか、建物にはっきりとした陰影を映し出している。
建物の横でいかにもフランス人らしい女性がひとりでタバコを吸っていた。
目と目が合い、挨拶した。   どうもここの管理人らしい。
「きれいになったでしょ。つい最近リニュアルしたのよ。まだ、朝早いからこんなに
空いているけど、昼間は観光客で一杯になるの..」
珍しく慣れないフランス語で話した。
フランス・オーヴェルニュへの旅 (新しい出発)  その1_b0076008_956945.jpg


庭の入り口の方からどうも観光客らしき団体が見えてきた。
あっという間に、先程までの静寂な空気が、大勢の人の話声で騒がしく反響する
空間に様変わりしてしまった。

「ラッキーだったね」相棒と先程の女性の教えてもらった駅までの近道、郊外の
住宅街を歩いて降りて行った。
簡単な昼食を取り、次の目的地であるもうひとつのパリにあるコルビュジェの
代表作であり、現在コルビュジェ財団になっているラロッシュ・ジャンヌレ邸に向かった。

ここジャンヌレ邸はコルビジュのパトロンであったジャンヌレの別荘として建てられ
たものだ。

駅から先程の郊外とはうって代わり、界隈という名のような町中の坂を昇りやっと
目的地に到着した。
玄関口に入った途端、一台の車から太ったおばちゃんが出て来た。
書類カバンを片手に持って、「ふん!」と機嫌悪そうに足でドアを閉める。

「怖〜〜!!一体あの人何者?」
彼女が、どうも以前コルビュジェ研究家から聞いた事のあるあの気難しい事で
有名な○○さんらしい。
いかにも….。と納得。   すぐ解ってしまった。

先程のサボワ邸よりも数段大きい空間の壁に沢山のコルビュジェの絵画が展示
してある。天井と壁の間に作られた窓が室内にスリット状に光を流し込む。
日本の、いや今や世界でも有名なコンクリート打放しで得意な某建築家の得意
とする技も、このコルビュジェの見まねから来ているのだろう。
殆どの建築家に大きな影響を与えた人である事を、改めて確認させられた思い
がした。

日本でのふたりの間での緊張感もこの地に来たせいか、段々緩んできていていた。
フランス・オーヴェルニュへの旅 (新しい出発)  その1_b0076008_9565010.jpg


「ひげ剃りがない。何処に行ったか知ってる?」
トランクの何処を探しても見当たらないらしい。
「まあ、いいじゃあない。どうせ、私達ふたりだから…」
のび始めてきた相棒の無精髭を見て言った。

by necocafe | 2007-07-26 09:58


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